会議 | 令和4年 第1回 定例会-02月24日-03号 |
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日付 | 令和4年2月24日(木) |
開会 | 午後1時 |
閉会 | |
場所 | |
案件 | 日程第一 会議録署名議員の指名 日程第二 議案の委員会報告及び表決 第五号議案 令和三年度江戸川区一般会計補正予算(第十一号) 日程第三 議 案 第五十号議案 令和四年度江戸川区一般会計補正予算(第一号) 第五十一号議案 令和四年度江戸川区国民健康保険事業特別会計補正予算(第一号) 第五十二号議案 江戸川区国民健康保険条例の一部を改正する条例 日程第四 発議案 第三十一号発議案 江戸川区議会会議規則の一部を改正する規則 第三十二号発議案 江戸川区議会委員会条例の一部を改正する条例 日程第五 一般質問 日程第六 陳 情 第百三号~第百七号 |
【再犯防止について】
◆十三番(間宮由美 君) 罪を犯した人々に出会い、ご相談を受けてきました。再び罪を犯してはいない人たちが持つことができたもの、それは心の拠り所となる「居場所」と毎日を支えてくれる「誰かの存在」であったと思います。再び罪を犯していない人たちの姿から、再犯防止のために必要なものが見えてくるように思います。
壮絶なDVに苦しめられたことで、夫を殺害した女性は、刑務所の中で模範囚でありました。刑務所を出てからご相談を受け、生活する場と生活保護に繋げることができたわけですが、それだけではなく、彼女がいかによい母親であったかを知っている息子さんたちが彼女を支え続けています。ですから、彼女は、今も真面目に生活をし続けています。
パンを盗んで刑務所に入った男性は、当時二十代でした。高校教師であった父親からのネグレクトでお腹を空かせ、何度もパンを盗んでいたのでした。彼を助けてくれたのは、刑務所で一緒だった六十代の男性です。出所してからの彼を心配し、自分が昔働いていた江戸川区の土木の会社の社長のところに彼を連れていきました。社長から連絡を受けた私は話を聞き、精神科の受診と生活保護に繋げました。
しかし、それだけであれば、彼はきっとまた刑務所に逆戻りしただろうと思います。でも、彼はその後、罪を犯していません。それは、社長と奥さんが毎日毎日、彼を朝早くに会社に来させ、ごみ出しをさせ、朝ご飯を食べさせ、たくさんの話を彼としていてくれたからです。
窃盗を繰り返し、七回刑務所の入った男性は四十代。話してみると、知的障害があるとすぐ分かりました。しかし、刑務所から何度出ても支援に繋がることはありませんでした。その彼を雇ってくれた会社の社長さんからご連絡を受け、彼にも生活保護という生活の基盤を渡し、障害者手帳の取得に結びました。
しかし、それだけであれば、彼はまた刑務所に戻るでしょう。それをさせていないのは、社長さんと会社の人たちです。彼が盗みをしないためにはどうしたらよいかを話し、彼にぴったりとついていてくれるのです。
罪を犯した人は、多くは特別な人ではありません。その特別ではない人たちがなぜ罪を犯したのか。話を聞くと、そこには小さい頃の虐待が見えてきます。また、知的や精神の障害があるにもかかわらず、福祉に繋がっていなかったこともあります。ひとりぼっちの子育てやひとりぼっちの介護があることもあります。
それでも、罪は犯してはいけません。嫌なことがあったとしても、障害があったとしても、一人で苦しかったとしても、それでも駄目なことは駄目なのです。人や、生き物や、物を傷つけることは許されません。
ですから、根本的には犯罪を犯させない。そのためにどうするかということを考えなければならないと思います。そして、それとともに、考えなければならないことが犯罪を繰り返させないということだと思います。それは、「被害者になる人をなくす」ということにも繋がることになります。
二〇一六年、今から六年前に「再犯の防止等の推進に関する法律」、いわゆる「再犯防止推進法」が制定されました。第一条には、この法律は国民の理解と協力を得ながら、再犯の防止などに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与することを目的とするとあります。
そして、第四条では、地方公共団体にも、地域の状況に応じた施策を策定し、実施する責務を義務付け、第八条では、再犯の防止等に関する施策の推進に関する計画である、「地方再犯防止推進計画」を定めるよう努めなければならないと求めています。
都内では、千代田区が初めてこの推進計画を作り、既に何度も研修会を重ねています。昨年も、庁内の職員向けに行うとのことでしたので、私も参加をさせていただきました。
講師は、龍谷大学犯罪学研究センター、センター長の石塚伸一先生と、NPO法人マザーハウス理事長、前科三犯、延べ二十年間を刑務所で過ごした当事者である五十嵐弘志さんのお二人でした。
石塚先生は、法学部教授として、刑務所の研究をされておられ、罪を犯した人々が、本当に立ち直ろうとすることを見守るその眼差しは、それはとても優しいものでした。
五十嵐弘志さんは、三度目の刑務所の中で、マザー・テレサの神の愛の宣教会のシスターたちと出会い、出所後、元受刑者の社会復帰を支援する『マザーハウス』を立ち上げました。八年前のことでした。
現在は、石塚教授をはじめ、たくさんの研究者、弁護士の方々と一緒に研究を深め、活動をされています。そして、施策を作る時には、必ず当事者を入れることが大切だとおっしゃるそのお話は、大変示唆に富むものでした。
「刑期を終えたら、皆さんと同じ場所に出てくるんです。しかし、出所者は何も持っていない。刑務所の中での賃金は、見習い工で一時間七円。一等工で一時間七十円。お金を持たずに刑務所を出てきた時に、その人に対する福祉の手は、何もない状態です。何年かでも刑務所の中にいたら、浦島太郎の状態です。街は変貌しています。都心に出てきたら、人に酔う。人が怖い。向こうから人が来たら壁の方を向く。社会に居場所がないのです。孤独が一番危険です。」
ですから、今、『マザーハウス』では、バースデーカードさえもらったことのない刑務所の中の人たち、約八百人との手紙の交換を行い、出所後は、住居支援、就労支援、月に一度の当事者ミーティングなどを行っています。また、当事者が気軽に立ち寄れる居場所でもあり、当事者と地域住民の交流の場として、「マリアカフェ」の運営もしています。
犯罪学研究センター、センター長の石塚先生の研究によると、刑事施設における収容人数が昭和二十年代にピークを迎えたものの、その後は減り続け、それが平成に入るとまた増えていき、平成二十年頃には再びその数はピークを迎えています。収容者の数が増え続けることで、六人部屋を八人で使うこともあるほどだったとのことです。そのときに、刑務所を増やすわけですが、一つの刑務所をつくるのにかかる経費は約六百億円、また刑務所内で一人にかかる一日の経費は六千七百円、一か月で約二十万、一年で約二百四十万、千人いれば二十四億円です。これらは、犯罪を犯す人がいなくなれば使わなくてもよい税金です。
今回、私は再犯防止の施策についてお聞きをするわけですが、再犯をさせない、そのことは被害者をなくすことに繋がることでもあると考えております。
被害者をなくすためにも、加害者をなくしたい。罪を犯してしまった普通の人たちも含め、どの人も幸せになってほしいと心から願い、江戸川区としてのお考えをお聞きしたいと思います。
一、再犯防止計画の策定に向けた江戸川区の状況をお聞かせください。江戸川区独自の計画を作ることが必要と考えますが、いかがでしょうか。
二、江戸川区における犯罪の状況をどのように分析されているでしょうか。お聞かせください。
三、再犯をさせないということは、被害者をなくすことでもあります。計画の策定前であっても、できることはしていかなければなりません。再犯防止に向けて、何が必要とお考えになるでしょうか。
以上、三点、お聞かせください。
以上で、一回目の質問といたします。
○副議長(堀江創一 君) 斉藤区長。
〔区長 斉藤 猛君登壇〕
◎区長(斉藤猛 君) お答えをしてまいります。まず、再犯の防止等の推進に関する法律、この法律では、国民が犯罪による被害を受けることを防止して、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与することを目的としております。
国の再犯防止推進計画に記載されている七つの重点課題である、これから、すみません、七つ申し上げます。一つ目、就労・住居の確保。二つ目、保健・医療・福祉サービスの利用の促進。三つ目、学校等との連携した就学支援。四つ目、犯罪をしたもの等の特性に応じた効果的な指導。五つ目、民間協力者の活動促進。広報・啓発活動の推進。六つ目、国と民間団体等との連携強化。そして、最後七つ目が、関係機関の人的・物的体制の整備であります。
そして、私たち地方公共団体に求められているのが、この七つ目を除いた六つの課題でありまして、この解決に向けては全庁で対応していく問題だというふうに思っております。
私自身のところにも、年に数回は刑務所の中から、あるいは、拘置所から直接お手紙をいただくことがありまして、そういった機会に、今お尋ねのような、ご質問の趣旨というのが繋がってくるかなというふうに思っております。区のそういった全庁を挙げて対応していく中で、計画自体を作るかどうかについては検討させていただきたいというふうに思っております。
二点目の犯罪の状況をどう見るか、江戸川区内のということでございますけれども、区内の刑法犯の総認知件数で言えば、平成十二年が一万八千二百七十五件ということでピークでございました。一度十三年に下がって、十四年にまた上がっていますけれども、平成十四年から一貫して減少しておりまして、令和三年になりますと、三千三百六十九件ということで、ピーク時と比べますと一万四千九百六件の減少、率にすれば八一・六%減少になっているところでございます。
これは、ひとえに警察や地域の皆様が一体となった地道な活動の賜物というふうに思っておりますけれども、総数に占める割合が多い窃盗等を中心に犯罪は継続的に減少しているところでありますが、特殊詐欺などの一部の犯罪は増加傾向にあります。区民世論調査でも治安向上が求められており、引き続き対策は進めていきたいと思っております。
今、申し上げたのは、周りの環境かなというふうに自分で話していて思います。議員さんがお尋ねの部分は、その方に着目したご質問だと思っていますので、そこのところは、再犯防止というのは被害者の減少にも繋がるんだという部分に着目して、これはしっかり考えていきたいというふうに思っております。
三点目については、担当部長からお答えいたします。
○副議長(堀江創一 君) 柴田総務部長。
◎総務部長(柴田靖弘 君) 三点目につきまして、私のほうからお答えさせていただきます。今の斉藤区長からのお話にもございました、六つの重点課題ということで、自治体にはこの策定が求められているということでございます。
この重点課題に取り組むことによりまして、再犯防止のためのその方々にとっては、お話にもございましたとおり、例えば、貧困ですとか、それから、疾病、障害、そして厳しい成育環境、それから不十分な学歴等ですね。様々な生きづらい、そうしたものを問題を抱えていらっしゃる犯罪、罪を犯した人がこの地域の中にあって孤立しないための支援、これが必要であろうと考えております。
私ども総務のほうでも、保護司の方々にもご協力いただき、更生保護女性会の方、こうした方々にそうした犯罪を犯した方々のその後のご協力をいただいているということをお願いしているわけですけれども、やはり六つの重点課題ということで、今申し上げたとおり、これからそうした全庁を挙げて、どのように取り組んでいくかということも含めて、計画の策定も含めて、検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○副議長(堀江創一 君) 間宮由美君。
◆十三番(間宮由美 君) 丁寧なご答弁をありがとうございました。区の中では、犯罪が減少しているということで、それは全国的にも少子高齢化の中でそのようなことになっているようです。七つの重点課題ということで、区長からお話をいただきました。全庁を挙げて対応していきたいということで、正に今、全庁でいろいろな部署の方々が、そしてまた民間の方々、部長からお答えがありましたように、民間の方々もそれぞれの場所でそれぞれの方が一人の今出てきた受刑者のために頑張って、再犯させないために取り組んでおられることと思います。そこに七つ目として、江戸川区としての推進計画が作られることで、今まで個別であったことが一つに束ねられて、そして一人の人への支援が重層的に行えるようになるのではないかと思います。
再犯者の割合は四八・七%、そして、再犯をするまでの期間は三〇%が半年以内ということです。それであれば、そのリスクの高い期間である半年、あるいは、一年の間に生活リズムを作り、生活の基盤を作ることができれば、再犯からは遠ざかることができるのではないでしょうか。
斉藤区長は、就任された令和元年の江戸川区保護司会報へのご挨拶の中で、再犯者率が過去最高を記録する中で、過ちを犯し、孤立しがちな地域社会の中で立ち直ろうとする人たちに対し、あたたかな心で寄り添い、再度社会の一員として立ち直らせようとする皆様の献身的な熱意とご努力が不可欠と記されていました。
保護司の方々の正に献身的なお姿は敬意を表すものです。しかし、保護司さんについてもらえない満期出所者もたくさんいます。支援する人が誰もいない人たちは仮釈放の二倍以上の再犯率ということです。法務省もそこへの対策は喫緊の課題としています。
先ほどのご答弁の中では、再犯防止推進計画、これについては検討させていただきたいと区長からのお答えでした。再犯防止推進法には、その第二十四条で、「地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じ、前節に規定する施策を講ずるように努めなければならない。」とございます。
江戸川区は、江戸川区らしい再犯防止の施策を講じていくべきと考えますし、そのために計画の策定に着手をするということが必要と考えます。今、検討させていただきたいというお答えではあったのですが、では、計画を作る、今すぐ作るためには、困難な課題は何かございますでしょうか。区長からもう一度お聞かせいただければと思います。
○副議長(堀江創一 君) 斉藤区長。
◎区長(斉藤猛 君) 困難な課題ということであれば、今は点だということだと思っています。それを線にしなければいけない。全庁的に今、点で対応しているのではないかと。それを線にして、できれば地域と一緒に面にしていきたい、そういうふうに思っております。
以上です。
○副議長(堀江創一 君) 間宮由美君。
◆十三番(間宮由美 君) 正にそうだと思います。ですから、それを面にしていくためにこの推進法の計画が必要なのだと思いますので、是非お願いしたいと思います。
昨年五月、ウイーンで開かれました国連犯罪防止刑事司法委員会において、再犯防止国連準則の策定プロセスを進めるための決議案というものが、全会一致で採択されたということで、地方自治体における再犯防止推進計画の策定も加速されると思います。是非、作り始めるための準備をお願いしたいと思います。
実は、今この時間もマザーハウスの方々が、地域の長年の懸案事項となっておりましたごみ屋敷、ここの数十年分のごみを取り除く作業を行ってくれています。地域の人たちがありがとうねと言ってくれることが何より嬉しいと言って、そしてお仕事をいただいたことに感謝をして、精一杯務めさせていただきますと、固く固まったごみの中での作業に立ち向かっていってくださっています。
犯罪に戻らない、戻さない、立ち直りをみんなで支える、全ての人の命を守る。そのために、江戸川区地方再犯防止推進計画の作成に取り組んでいくことを改めて要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
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